「モーツァルト・フォノ・プロフェッショナル Mk-3」 真空管式・LPイコライザ・アンプ
   標準価格 ¥200,000(税別)      
ご好評の Mozart Phono Professional 電源部、新設計、高圧B+電源回路を採用してバージョンアップ。 

モーツァルト・フォノ・プロフェッショナルのコンセプトと技術解説

LPの初期盤、SP(78回転)盤等の古いレコードを再生しようとすると現代の高級オーディオ機器で一部特殊なものを除けばその再生を正確にできる製品は皆無です。1950年ほとんどのプリアンプはレコード再生のためのいくつかのイコライザカーブを切り替える機構をもっていました。さらに高級機にあってはターンオーバー(低域補正)とロールオフ(高域補正)を個別に持ったものもありました。モーツァルト・フォノ・プロフェッショナルは従来の6つのイコライザカーブを搭載した「モ−ツァルト・フォノ」の多くのユーザーのご要望に応えLPモノラル盤再生にとどまらずSPレコード盤再生にも対応してほしいいとの要望から企画されました。初期LPモノラル盤のファンのコレクションにはかなりの枚数のSP盤が含まれていることが多くSP盤を正確に再生できないものかという要望が多くよせられていました。

一般的に1954年にそのイコライザ・カーブがRIAAに統一されるまではLPモノラルのイコライザカーブとして知られているのは、AES、コロンビア・LP、RCA・LP、FFRR,NAB等です。しかしこのイコライザを採用していた期間は1940年から1954年ころまでの実はかなり短い期間でした。

初期のピックアップによる電気再生は必ずしもフラットではありませんでしたのでイコライザの特性の正確さは意味をもたないと考えられていました。アコースティック録音の時代ではその周波数特性は 100Hz から 3000Hz 、 電気録音が 始まる1920年代中頃で帯域も50Hz から6000Hz 程度でしたから帯域外の特性も問題にはならなかったとおもわれます。1930年頃、米国RCAがオルソフォニック録音発表、 帯域は30Hz から8000Hz に広がりす。1945年 英国デッカのffrrでは高域特性が12000Hz まで拡大されます。電気蓄音機が普及するにつれターンオーバーを持つ特性で記録されるようになります、それは振幅の大きくなる低域部でカッティングレースが隣の音溝に 飛こまないようするためです。 ターンオーバー周波数はアコースティック時代の250Hzあたりにとられました。アコースティック再生が一般的ではなくなると低域の不足を電気的に容易に補正できるのことから500Hzくらいに上げられました。

レコードのレーベル、時代によりそのイコライザカーブは様々です。同じレーベル(メーカー)であっても製造された時期によってそのカーブが違っています。今回そのカーブの一覧チャートを作るに当たっては当時メーカーの発表がほとんどないため、当時のアンプに添付されていた参考資料からそのカーブを類推しました。したがって必ずしもメーカーが規格したものと相違する場合があるかもしれませんが、大きく違ってくることはないとおもいます。

次に本機の技術的側面をみていましょう。ターンオーバーとロールオフのいくつかの定数を切り替え組み合わせることによって、SP、LPと問わずアナログ盤を正しいイコライザーカーブで再生しようとすると多くの必要な条件が必要です。

まず、イコライザーとはどのような性格のものを指すのかを考えて見ましょう。LPレコード盤の製作時には低域成分のカッティング時には大きな信号が大振幅となるのを避け、高域成分が非常煮に微細な振幅がノイズに埋もれて再生不可能となることを避けるという絶妙の工夫をしたのがイコライザーカーブです。そこでアンプでは(フラットポジション以外のほとんどのイコライザーカーブは)低域から下降する曲線を中域に於いて一旦平坦とし、更に高域について再び下降させる2つの屈曲点を持たせます。このカーブがレコード製作各社で異なり、1955年(日本では56年にJIS規格にて)に「申し合わせた」のがRIAAという統一規格です。しかしながら直ぐにはこの規格に従わなかったメーカーも多いのも事実です。

 イコライジング動作を真空管で行う例としてはマッキントッシュC22、マランツ#7代表されるNFB型イコライザーと、あまりり知られていませんがサイテーションに採用されているCR型とがあります。いずれの回路でも十分なゲインを得ておいて高域にいくほどNFBを強めたり、CR型は高域に行くほど信号をアース間との抵抗でロスさせるという考えです。 実際にはNFB型では低域端でのS/Nと正確なイコライザーカーブを構成する目的で多量NFBとし、CR型では低域でもゲインの消費をしてS/Nを良くする配慮をします。

 アンプ製作の立場から二者の比較をすると、本来的な音の優劣はほとんどなく、トータルゲインを多くみて低域端でのNFB量を多く見たNFB型やロスを多く設定したCR型は「どこかツマラナイ」印象を持ちました。いずれのタイプも低域でのロスを多く見込むと音質面でもロスが有ると感じた訳です。

 NFB型に向くハイμ管の12AX7では出力インピーダンスが大きくなって、そのままではイコライザーアンプとして「送り出し」が出来ませんので、低インピーダンス化を図る目的で終段はカソードフォロワーとする必要があります。そこで理論上は0.9倍と言うカソフォローワー1段のアンプを製作してみると、ゲインが減ったからという理由のみでは説明の付かない音質面で痩せる傾向があり、幾ら電圧や球を選びなおしてもその傾向は補えず、インピーダンス変換は簡単でも余り採用したくない…との印象をもちました。

一方、CR型を上手く使えば中ミュー管で製作できるので数kΩで送り出すことが可能です。低域端でのロスをゼロにするような回路が工夫できれば、それは音質にも奥行感が出て、折角なら旧い音源に固有の性格をより愉しみたいとするユーザーの目的にも合致します。そのために多くの真空管の実験をしましたが、結論はEcc85/6AQ8の採用でした。この球の良いのはマイクロホニックが大変少なく、現在でも得やすい真空管ということもあります。スペックだけなら5965なども候補になりますが、実際には使用経過で独特のノイズが出ることもあり、その点Ecc85は静かで2段構成のゲインが2000倍(65dB)程度もあり、カートリッジ等にもよりますが、イコライジングでのロス分を見込んでもCD等との音量落差もほとんど感じない程度の出力が出来ます。 
 
  一方電源は洩れ磁束が少なくて薄型のOIコアを特注し、整流管と同じ両波整流にこだわり整流後の電圧で270Vと低めに設定しました。イコライザーでもプリでも「美味しい1V(本当は0dB)」の出力が得られれば良いのであり、むやみと高い電圧で構成する必用は無いと考えるからです。真空管のプレート電圧を高く設定することは単体のインピーダンスを上げることであり、一方真空管はプレートが100Vも有って入力信号が適切なレベルなら通常20V以上の信号出力能力は持っています。 一方今では1000μFを越える大容量コンデンサーで小型で寿命も長いものがあり、抵抗と大容量コンデンサーの組み合わせはチョークコイルによる整流よりも周波数特性が良いとも考えられます。ヒーターもレギュレーターの採用で電源部は大変小型化を図ったものとなりました。

 イコライザーカーブは低域のターンオーバー、高域のロール・オフ共にコンデンサー容量を「足し算」することで屈折点を変更しています。計算上と実際とでは合致せず、多くの要素が絡むようで細かい実験が必要でした。ターンオーバーをフラットにすると、ロータリースイッチへのコンデンサー取り付けが「足し算」できずに大変複雑になります。最初期のSP片面盤のみが該当するものなので、オプション設定としました。ターンオーバーのフラットポジションはかなりと特殊な盤に限定手されることもあり、標準仕様としてはFLAT無しとしています。

 Ecc85のカソードはよく管理された1個のダイオードで済ませ、球の増幅率のバラつきを少なくするために抵抗を並列として電流の安定化を図っています。0.7Vを少し切るバイアス電圧となります。簡単でノイズも一切無く0Hzまで信号を接地するので抵抗とバイパスコンデンサーの組み合わせのように低域の周波数に時定数を持つこともコンデンサーの寿命の心配もありません。

本機では更に出力ケーブルの影響等を少なくする目的から出力段をSRPP(シャントレギュレーテッドプッシュプル)構成としました。多くを聴かない自作マニアの方にはSRPPの音質を嫌う向きもありますが、それは300V近い動作をさせたもので、音質がヒステリックの傾向が出てくるだけで無く、ワイアリングのミスから他チャンネルや前段の構成と干渉しているのを感じてのことであり、その点でも今回は十分なヒアリングをした上で電圧を決定しています。出力インピーダンスは公称4.5kΩですが、本来はもっと低い出力インピーダンスで受ける構成のプリやメインアンプでも音質の変化は極少に抑えたものとしています。10kΩ以上の入力インピーダンスのアンプがお奨めです。

 シャーシーは4枚構成で内面に複雑なリブのある側板を四隅のアルミダイキャストで嵌合させる強固なものを手加工しています。十分すぎる剛性感と外観等から採用しました。

 またイコライジングや段間結合用のコンデンサーはいずれもアルミ箔フィフムや銅
箔フィルムにこだわり、「サ行」の強まる傾向のメタライズドコンデンサーは使用していません。メタライズドの金属部の厚みはオングストローム単位、箔/フォイルはミクロン単位で、音質にも差が有るとおもいます。

イコライザ・ポジションの決定に当たっては、先ずレコードのレーベルを確認して別紙のイコライザ・チャート表からをの該当するレーベルを捜し、ターンオーバーとロールオフがどのイコライザ・ポジションが最適かを見つけます。次にイコライザーポジションツマミをそのポジションに回してイコライザ・カーブを選択します。但し、LPモノラル盤でも最近プレスされている盤、いわゆる復刻盤のモノラル・LPレコードはRIAA・カーブでイコライジングされプレスされているレコードもありますので注意が必要です。

本機では使用する真空管をMT管の中でも内部抵抗の低いECC85(6AQ8)を採用、CR型の回路構成で低インピーダンス動作させることによりイコライザに要求される高いクォリティーの音質を実現しています。 

標準仕様はフラット・ポジションが設定されていませんが、オプションにて戦前のアコースティック録音盤、エジソン・ダイヤモンドディスク等に対応するフラット・モデルも用意しています。

入力は通常のMMタイプのカートリッジです。MCカートリッジをご使用になる場合はMC昇圧トランスやMCヘッド・アンプを入力の前に接続してください。

主な仕様 Specifications

入力感度 Input sensitivity: 2.5mV/1kH/47kΩ(MM)
許容入力 Maximum Input: 500mV
入力インピーダンスInput Impedance:  57kΩ
RIAA偏差 RIAA Accuracy: ±1dB(including All EQ Curbs)
利得 Gain: 35dB/1kH
S/N比 S/N Ratio: 76dB以上
使用真空管 Tubes:  ECC85/6AQ8  3本
出力インピ?ダンス Output Impedance : 4.5kΩ(1kHz)
  推奨インピーダンスは10KΩ以上 
消費電力 Power Consumption: 40W
寸法 Dement ions: 330(W)x280(D)x105(H)mm
重量 Weight: 4.9kg